あるおっさんの話。

あのー、これから書くのは人の悪口であり私の愚痴である。こういうことをぐだぐだ書くのはあまり本意ではないのだが、あまりにそりゃ違うだろ、と思ったので、ちょっと書いてみる。とにかく人の悪口は嫌い、後ろ向きな話は嫌い、という人はもしかしたらこれ以上読まない方がいいのかもしれない。

会社で・・・なかなか説明がややこしいんだけど、とある大企業(以下、Z社)に、私が勤めてる会社(以下、A社)と、また別の会社(以下、B社)が、とある業務を請け負う業者としてそれぞれ常駐していて、Z社の中で共に仕事をしている。A社とB社はライバル関係でありながらも、共に協力しあわないと業務が円滑に進まないような関係である。ただ、実際にZ社に詰めている人間は、言い方は悪いがそれぞれの組織の末端の人間同士だから、別にライバル心むき出しで、とかそういうことではなく、それなりに円滑にやってきた。

B社の人間は5、6人いるんだけど、最近、その中でも一番若い子(以下C君)とA社の僕らは比較的世代が近いこともあって、互いの手が空いた時によく話す様になった。会社は違うが、コミュニケーションを取り合うことは非常に大切だと思ったし、素直に仲良くなれて良かったなぁ、と思った。ところが・・・最近、C君があまりというか、ほとんど話しかけて来なくなった。私はそう言えば最近あまり話してないけど、まあお互いの仕事も違うわけだし、たまたまそういう機会がないだけだろうな、と思っていたのだが、実はそうではなかった。

今日、廊下でばったりC君にあった時、
「全然メールアドレスとか教えてくれないじゃないですか。僕、嫌われてるのかと思って。」
と言われ、
「ああ、ごめん。伝えるのすっかり忘れてたよ。」
とその時は軽く返事をしたのだが、多分嫌われたのではないか、とC君が言ったのは、半分以上本気だったのだと思う。というのも、実はC君は、B社の先輩(以下D氏)に「業務時間内にA社の人間と無駄話をするな。あんまりひどいと辞表を書いてもらうぞ。」と脅されたんだそうである。言っておくが、D氏は年こそ大分上だが、C君の上司でもなんでもなく、彼に対する人事権などもちろんない。

もしかしたら、D氏が一生懸命働いていた時に、C君は私とだらだらおしゃべりしていたかのかもしれない。しかし辞表とはなんだ。人の人生なんだと思ってるんだ。私はD氏が既に辞めた先輩の元で、叱られながら仕事をしていた時代を知っている。あんたはいつの間にそんなに偉くなったんだ。私は、そのD氏の一言のせいで、私に話しかけることが出来なくなったC君が、もしかしたら私に嫌われたのではないか、と一人で気を揉んでいたのか、と思うと、C君が気の毒に思えたし、ちょっとしたことで辞表などと人の人生を左右する様なことを、上司でもないのに平気で口にする(上司であっても軽々しく言ってはいけない)D氏に、非常に、非常に腹が立った。

真面目に、常にお通夜みたいにみんな張りつめた空気で仕事してるのが、それが正しい職場のあり方なのか? まあ、このへんは色々意見はあるだろうが、私はそうは思わない。何も毎日毎日何時間も無駄話をしていた訳ではない。流石にこちらにも仕事がある。

で、問題は・・・このD氏。好き嫌いはあれど基本的にはいい人・・・というか、まあ上品な人であるのは間違いない。ところが、どういう訳かあきらかにA社の我々は、このD氏から嫌われている。目は合わせない、挨拶は絶対しない、仕事以外のことでは絶対に話しかけてこない、と徹底している。

まあ、いい。何か気にくわないことがあって嫌われたのであろう。流石に他社の人間だから何か我々に苦情を言ってくることは一切ない。B社の中では誰よりも真面目に働きZ社の人間に対する対応も誠実だ。それでいて、B社の中にあっても特に気難しい感じもしない。

だが、裏でそうやって、他人を深く傷つけている。いい人を繕っていて、本当は悪いやつ、というならまだスッキリする。ところが、本人は普通に善良で快活で真面目な人間だと自分のことを評価している感じで、どうやら自分の二面性、残忍で冷酷な裏の顔に自分自身で気付いていない様子なのだ。これがなんとも怖い。怖過ぎる。

自分の闇と対峙しない人間は、いつか深く深く自分の闇に飲み込まれる。私はそう信じる。D氏はお昼休みになると語学の勉強をしている。ハッキリ言って語学を学んでいる場合ではない。表面のコミュニケーション能力を高めたって、人間性が高まっていなければまるで意味が無い。別にお人よしだろうが、ろくでなしだろうがなんでもいいのだが、私は自分の闇と向き合わない、あるいは闇の存在を忘れようとしている人間のことを一切信じない。そしてD氏はあきらかにそのタイプの人間である。裏表はあっていいよ。誰でもあるんだし。ただ自分の裏の部分の存在を認められない、認識出来ないというのは人として非常に悲しいことである。

私はあんまりにD氏の事をこき下ろし過ぎたであろうか? こんな事は会社勤めをしていれば、よくある事で、こんな事で怒っている私は、ナイーブ過ぎるのだろうか? でも、繰り返しになるが、私は、自分の闇と向き合う事だけは忘れない、というのをモットーにしている。多少自堕落でもここさえ押さえて置けば、人間として大きく道を踏み外す事はないと信じる。

私はD氏がA社の業務を手伝ってくれたときには、「ありがとうございます。」という。向こうは返事はしない。それでもこれからも言い続ける。私は彼と同じレベルには落ちたくない。私は、彼に説教出来るほど偉くもないし、またそこまで親切な人間でもないわけだが、これからも「ありがとうございます。」と言い続けることがせめてもの私からのメッセージだ。多分、伝わらないとは思うが。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です