ITの世界では、Appleだ、Googleだ、Amazonだ、Facebookだとアメリカの企業ばかりの隆盛が目立つ。それに対抗して、例えば角川歴彦の「クラウド時代と<クール革命>」では、「東雲(しののめ)」なる日本製のクラウドを作ろう、みたいな話が載っている。しかし、ちょっと気になるのは、これまでは日本の企業の製品が世界を席巻していたのに、現状の日本企業は見る影もなく、このままでは日本が危ない、海外企業に乗っ取られる、みたいな論調が多いことだ。私は正直、海外企業に日本の市場を乗っとられて何が悪い?と思ってしまう。
まず自分の回りをIT環境を振り返ってみると、まず私の愛用しているメインパソコンはiMac。サブのノートパソコンは台湾のacer。スマートフォンはiPhone。使ってるサービスは主にgoogle。日本のサービスはほとんど使ってない。Apple製品は他社の製品と違い過ぎて、もはや同じApple製品以外に比較するものがなく、acerは他の日本製のノートパソコンより2、3割安い。そして、googleが提供している全てのサービスを同様に展開している企業も他にはない。という訳で、独自の商品、サービスを展開しているならそれを使うし、他に同等の商品、サービスがあるのなら、少しでも安いものを使う。そして、残ったのが現在のラインナップだ。
それでも別に私が非国民というわけでもなかろう。ニンテンドーDSで遊んで、トヨタのクルマに乗ってるアメリカ人が、特別アメリカを裏切ってると言い切れないのと同じだ。
そんな訳で、例えこれまで日本人が日本製の製品を中心に使ってきていたとしても、それは日本人が作ったものだから、ということではなく、単純に他のものに比べて優れているから、という理由で使っていたと思う。
ところが、日本人は久しく日本製の製品に囲まれて暮らしてきたから、外国製品、サービスの猛攻を見て、新たな日本独自の製品、サービスを展開しないと日本が危ない!と慌てている。まあ、産業立国的にはやばいのかもしれないけど、外国に侵略される様な気分になっているのはちょっとおかしい。
ここで一歩引いて考えてみてほしい。Apple、Google、Amazon、これらの企業の製品、サービスはアメリカ政府の介在によって無理矢理日本に押し付けられたものだろうか? そうではないはずだ。そして、彼らはきちんと製品やサービスを日本に最適化している。日本だけではなく、世界中のローカル仕様に合わせて最適化している。だからこそ、今の彼らがある。
そんな彼らにどうしても対抗したいのならば、日本だけを見ていてはダメだ。世界標準の製品、サービスを作らないと。日本国内だけを見ていたのでは、決して、日本に進出してきたAppleらには勝てない。
日本の携帯は、オサイフケータイ、スイカのFelica、ワンセグなどの便利な機能があるが、どちらも世界的にはマイナーな仕様。しかし、これらが搭載されていないと国内では売れないので、どのメーカーもこの高性能なケータイを国内マーケットの為だけに作る。ガラパゴスケータイと揶揄されるのも仕方がない。
これからは世界標準を作る、あるいは採用して、日本メーカーと言えども、国内使用のモノはあくまで世界標準をベースにカスタマイズしたモノ、ぐらいにとどめておかないといけない。先日、ソニーエリクソンがドコモから出したスマートフォン、Xperiaはオサイフケータイ、ワンセグ機能もない世界標準仕様だがちゃんと売れている。別に国内仕様に特化されてなければ受け入れられない訳では決してない。
繰り返しになるが、日本の産業界が本当に復権したいのならば、最初から世界を視野に入れるより仕方がない。特に規格の策定については、世界標準を採用しないと全く意味が無い。狭い日本でせせこましい談合や政治取引をしてる場合では全くない。だから、私は、日本が危ない、とか、日本を守らねば、とかいう、その手の論調には同意しかねるのである。Appleなどの今をときめく企業は、わざわざ海を越えてやってきた。日本人はアメリカ映画には憧れ続けてきたかもしれないが、アメリカ製品に憧れ続けてきた訳ではない。彼らも一から日本で足場を築いたのだ。日本企業、そしてそれを後押しする政府も、彼らと同じ気概で世界を取りに行かない限り、結局は日本の市場も取れないのだと思う。
頑張れニッポン! 再び世界を狙え!