先日、BSジャパンで「アウトレイジ」と「アウトレイジ ビヨンド」を放送していたので、とりあえず未見だった「アウトレイジ ビヨンド」を見てみた。
結論からいうと・・・、期待していたより面白くなかった。
たけしの映画は割りと好きだし、前作の「アウトレイジ」も楽しめたので、じゃあ一体どの辺りがピンと来なかったんだろう?と思い、ネットにあふれる批評も参考にしながら、甚だ余計なお世話ではあるが、「アウトレイジ ビヨンド」の欠点を検証していこうと思う。(いや、本当に余計なお世話なんだけど(笑))
まず、豪華キャスト。いや豪華キャストに問題はないが、それぞれのキャラクターの肉付けがあまりなくて、結局どういう人物かよく分からない人が多い。特に関西の花菱会の連中は物語のカギを握る人物でありながら、ほとんど3人(神山繁、西田敏行、塩見三省)一緒のシーンしかなく、会長の布施(神山)が豪快に笑っているシーンと若頭西野(西田)、若頭補佐中田(塩見)が恫喝してるシーンしか印象に残らない。山王会の会長の加藤(三浦友和)も重要なキャストだが、結構ケチという以外はあまり人物的な掘り下げがなかったと思う。
また、大友組の金庫番から本家山王会の金庫番へとのし上がった石原(加瀬亮)の転身振りは面白かったが、英語を操るインテリヤクザから、終始ヒステリックに怒鳴りっぱなしの人になってしまい、いい役回りだけにここも一工夫欲しかった。
それに比べれば、前作はヤクザの格的には下っ端が多かったが、大友(ビートたけし)の手下の水野(椎名桔平)、のらりくらりの態度で結果的に大友組に多大な被害を与える大友の親分格の池本(國村隼)、大友に襲撃され口の中をドリルで攻撃されてしまう村瀬組会長の村瀬(石橋蓮司)など、キャラ立ちのキャストが勢揃いだったし、山王会会長の関内(北村総一朗)が重石としてしっかり効いていた。
まあ、キャストに関して言えば、もし最初から続編を予定していたら、第一作であそこまで主要キャストを殺さなかっただろう、という指摘もあり、そういう意味で配役の苦労はあったとは思う。
後は・・・暴力シーン。暴力シーンが沢山あればよいと言うわけではないが、たけし映画の暴力シーンは、必ずこれまでの暴力シーンにはないような工夫がなされており、それは前作でも同様だった。(村瀬が歯の治療中に大友に襲撃されたり、大友の怒りに触れた池本が大友に「舌を出せ!」と言われ、舌を出した瞬間に顎を押さえられ、舌を噛み切りながら射殺、など) それに比べれば、今回は石原がバッティングセンターのボールを延々当てられるぐらいで、それほど目立ったシーンはなかった。
暴力シーンの淡白さは、そのまま演出の淡白さにもつながっていると思う。たけしならではの映像的な演出も今回は突出したものが感じられなかった。また、クレジットを見ると衣装は今回も黒澤和子だったが、なぜか前回ほど印象的ではなかった。黒澤も今回は映画の中に際立ったキャラクターをいまひとつ見いだせなかったのではなかろうか。
さらに・・・ストーリーもちょっと大きく風呂敷を広げすぎた感じがある。下部組織の組長だった大友が山王会、花菱会といった関東一、関西一の暴力団を向こうに回して大活躍してるのも少しおかしいし、大友の大学の後輩でマル暴の一介の刑事である片岡(小日向文世)も、もう少し小さい範囲ならともかく、関東、関西の大暴力団を裏から一人で操ろうとしているのも、ちょっと無理がある。
とまあ、批判ばっかりになってしまったが、「アウトレイジ」は面白かったし、「アウトレイジ ビヨンド」も、序盤では、山王会古参幹部による新会長の加藤、新しい金庫番の石原への不満がくすぶり、いかにも面白くなりそうだったので、その分、自分の中で余計に期待値が高まってしまったんだな。
後、これを言っては身も蓋もないが、たけしの映画はやっぱりもっとパーソナルな視点のものが面白いと思う。個人的には「TAKESHIS’」の様な作品が好き。ただいくらたけしといえど、興行成績はある程度残さないと次の映画撮れないんだろうから、だからこそもっと「アウトレイジ ビヨンド」の完成度が高ければ、芸術性も高い、一般受けもする、で良かったと思うんだけどね。
それにしても、ウィキペディア見て改めて思ったんだけど、たけしももう結構な本数映画撮ってるんだね。芸術性も評価され、そして興行面でもよい成績を収めるクリント・イーストウッドの様な監督になれるかどうか・・・。これからの北野監督にも注目していきたい。