スーパープレミアム「獄門島」を見て。【※盛大にネタバレあり】

 
感想をウェブ上にあげるにはちょっと遅きに失っしている感もあるが、先日NHK BSで放送されていた「獄門島」を見た感想を書こうと思う。市川崑監督、石坂浩二主演の金田一シリーズが強烈な印象として残っているから、どんなもんだろうか?と思ってみたが、まあ・・・全体としてはギリギリ合格点?

まず今回、金田一に扮した長谷川博己だが、上手にやっていたと思う。少なくとも今回の演出の意図に沿った人物像をしっかり作り上げていたように思う。ただね・・・今回の金田一は、復員したばかりで戦争による心の傷が癒えない、時折暴力的な衝動を見せる金田一だったのだが、その設定がどうもね・・・。確かに時代設定的には、心に大きな傷を負っていておかしくはないんだけど、『獄門島』以外の金田一シリーズを見ても、あんまり戦争による心の傷を抱えてる様な様子がないからねぇ。だから原作にないテイストをそんなにふんだんに入れてしまうのもどうなのか、と。

そもそも、3姉妹が連続して見立て殺人にあうのを探偵が推理する、という娯楽要素と、戦争の傷跡、トラウマというシリアスな要素を同居させることにちょっと無理があると思う。それよりは、原作どおり、『復員船』とか『ラジオの復員便り』とか『戦争でお寺の鐘が供出されたのが戻ってきた』とかそういう時代背景だけを挟んだ方が、こんな田舎の島にも戦争の影響があったんだな、としみじみ感じられるし、また戦争のことは、金田一耕助ものに限っていえば、それぐらい触れておけば十分だと思う。

配役について言えば、もう少し芸達者な人に出てて欲しかったかな、と思った。これもやっぱり市川崑版金田一耕助との比較になってしまうが、市川崑版の時の、加藤武と大滝秀治と三木のり平、これは最強だった(笑) 殺人 & 田舎ならではの土着的人間関係によってどうしても物語が陰鬱になってしまうところを、軽妙な笑いでバランスを取っていたのが上記の3人。例えば、大滝秀治が住職役で、通夜の席で大して悲しんでいる様子もなく、列席者の様子を上目遣いで見回している様とか、実際こんな感じの人いるわ、と凄く納得した記憶がある。今回の金田一で言えば、脇役陣でいい味出してるな、と思ったのは古田新太だけだった。

演出は概ね良かったと思うが、住職と医者と村長の3人については、もう少し結びつきを強く印象付けるショットがあって良かったかな、と思う。3人がお互い目配せする、などのショットがあれば良かった。というのも、この3人が島の一番大きな網元で実質的な島のボスであった鬼頭嘉右衛門の意を汲んで、お互い事前に相談する訳でもなく、それぞれ殺人を犯す訳だから、冒頭にあった3人が並んでいるだけの3ショットでは、ちょっと説得力に欠けるかな、と。

話はちょっと脱線するけど、視線を映すショットとか、声は聞こえないが、人を捕まえてヒソヒソ話し合ってるところを映すショットとかって大事だよね。ゴッドファーザーで、5大マフィアが集まって会議するシーンでも、それぞれの視線や態度、誰と誰が話をしているか、を見て、ドンが誰が黒幕なのかを確信する訳だし、ドンの葬式のシーンでも、一体誰がコルレオーネ家を裏切るのか?とマイケルがそれぞれの参列者を注視するシーンで、人々の視線、遠くで話し合う様子などが演出としてとても上手に使われている。

そういうシーンは小説では表現出来ない映像表現ならではの強いヒキだから、時間が限られている分、そういうのを有効に使って欲しいなぁ、と思う。

・・・こうして振り返るとケチしかつけてないが(笑)、それでも十分楽しめた。やっぱり『獄門島』は本が相当面白いし、少なくとも本の良さを打ち消すような悪い演出ではなかった。後、最後のシーン! これは良かったよ。島から去る船上で金田一が受け取った電報には

『アクマガキタリテフエヲフク タスケコウ』

と書いてあって、次回作への見事な橋渡しとなっている。(こんなエンディングにしたからには次回作あるよね?(笑))

という訳で、既に映画、テレビと何度も作られている作品を作るのはとてつもなく大変なことだとは思うが、続編を期待したい。

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