監督について
園子温監督作品。初めて観た。
役者について
この映画はでんでんに尽きる。脇を固める女優陣も体当たりの演技で良かったが、でんでんがいなかったら、全く説得力を持たない映画になっていたかも、と思わせるほどの熱演・・・というか怪演。この人の演技見る為だけに映画を見る価値がある。
本編評
埼玉で起きた愛犬家連続殺人事件がモチーフとなっている作品だが、前半の村田(でんでん)のひとたらしぶりが凄い。例えば、社本(吹越満)夫妻の夫婦間の関係や娘との関係がうまくいってないのを瞬時に見抜き、それぞれに優しい声を掛け、相手を信用させる。その後、それらの人間関係を詳細に知っていることを楯に自分の仕事を手伝うよう、知らない間に家族ごと取り込んでしまう・・・。こういった村田の人をたやすく自分の支配下に置いてしまう天才的な手法があまりに見事で(それはとりもなおさず、でんでんの演技が見事だからなのだが・・・)、思わず引き込まれてしまう。(以下若干ネタバレ)
ただ、社本がそこから反撃する訳だが、ラストシーンまでの流れがどうもなぁ。最後、社本が死んでしまっては意味がない、と思った。恐ろしい人間の闇を見て、一旦は狂乱しても、そこからなんとかして自分を取り戻し、最後は日常を取り戻す、という流れでないと、教訓にならないというか、この手の人間の(そして、おそらくは誰もが内面に密かにもっているであろう)残忍性、利己性にどう対峙し、克服するか、という回答がないままだ。それ故、せっかく興味深いテーマだったのに、最後は単なるスプラッタに終わってしまった、という印象が強い。
おすすめ度(★5点満点)
★★★☆☆
傑作に成り得たのにちょっと残念、というのは正直な感想。序盤のテンポの良さ、村田の異常さが露見する場面、エロスというより『いやらしい』という表現が似合う嫌悪感を抱きさえする濡れ場のシーンとか見どころはあるんだけどね・・・
あと、スプラッタがダメな人は絶対に見れない(笑) 普通に人体を解体してるので・・・
人間の心の闇、スプラッタ、その心身両面の怖さが存分に味わえるので、本当の怖い映画を見たい人にはオススメしたい。