【しがない映画評・その10】HOUSE

 
監督について
大林宣彦の初監督作品(※商業映画として)

役者について
いわゆる『ハウスガールズ』なる7人の少女が主人公たち。その中でも中心となるのは池上季実子と大場久美子。ハウスガールズの中では池上季実子だけが女優の演技をしてるかもしれない。

本編評
スプラッタコメディとでもいうのだろうか。いわゆる『リング』的ではない極めてふざけた怪談。後の大林宣彦作品を考えるといささか不思議な脚本の選択だが、東宝映像という老舗映画会社の出来たばかりの子会社から、ジョーズの様な作品を、と乞われて、そのリクエストに答えての脚本らしい。

2017年の目で見ると、特撮技術に頼りすぎた(しかもかなりチープな)B級ホラーということになるのだが、それでも7人の少女達が終始おしゃべりしている様子、バックのゴダイゴの音楽、当時の特撮技術、全てが70年代を思い起こさせ、その当時独特のポップさはこの作品の大きな魅力になっていると思う。

時代背景
この映画は本編内容より、その制作過程の方が日本映画史に影響を与えているという不思議な映画である。大林宣彦自身は、すでにCMディレクターとしては有名な存在であったが、当時の映画界は、それぞれの会社の従業員たる職業監督が、会社の映画を撮る、というシステムで、それは例え黒澤明であっても、小津安二郎であっても、例外ではなかった。という訳で、大林宣彦自身もインディーズの映画制作はしていたが、自分が商業フィルムの映画を撮るなんということは夢想だにしてなかったらしい。

ところが、先にも少し書いたが、東宝映像から、大林さんみたいな人と何か仕事がしたいというオファーがあり、企画が通るとは思っていないながら、作ったのがジョーズつながり(つまり人を喰うという意味で)の『HOUSE』の台本であったという。

しかし案の定というか、東宝の組合側から猛反対に合う。そこで大林宣彦はハウスガールズを立てて、週刊誌、少年誌、ラジオドラマなどの今で言うメディアミックス戦略を一人で行い、『HOUSE』の映画化への足固めを一人で行ってしまった。こうして、社員ではない、かつ助監督の経験もない大林宣彦が東宝というメジャー映画会社の監督とプロデュースを引き受けるという、その後の日本のメジャーな映画会社の映画作りを大きく塗り替える事件とも言える映画作りがなされることとなった。

おすすめ度(★5点満点)
★★★☆☆

色々書いといて★3つかよ!と突っ込まれそうだが、あくまで本編の内容的にはこんなもん。裏に旧態依然とした映画業界に風穴を開ける、とか、CM作りで培った特撮技術を東宝のスタジオの真ん中でやる、などの意図が見え隠れする訳ではないが、結果、奇をてらったり、特殊効果をより強調する作りになっていて、映画の中にさらっと馴染む、いわゆる大林マジック的な演出がこなれてくるのには、もう少し本数が必要となる。

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