NHKスペシャルのナベツネを見て思うこと。

Nスペのナベツネ、リアルタイムで見てた。一介の政治記者があそこまで政治の中枢に食い込んでいたのは異常としかいいようがないが、それでもナベツネ始め、歴代の自民党総裁は戦中から反戦派が多かったのは結構意外だった。ナベツネが戦争中から一貫して反戦派で、終戦後一時期共産党に所属していたというのも初めて知った事実でかなり驚いた。

それを考えるといわゆる55年体制は、社会党も自民党も、実際にはどちらも左派であったといえる。理論的、理想論的左派と、実際の戦争を体験し、その苦い経験から反戦を唱える左派、どちらがマシかというのはここで書くまでもないことだ。

一部の人間だけが政治を動かし、それこそ半沢直樹よろしく権謀術数、そしてカネが入り乱れた戦後政治は反省すべき点も多いのだろうが、戦後の混乱期、それでも戦争体験を元に再度戦争に巻き込まれることだけは避けなければならない、という思いで自民党のリーダー達はなんとか国をうまくコントロールしてきたように思えた。

彼らの政治手腕もあってか、幸い終戦から現在まで朝鮮戦争、ベトナム戦争などに直接巻き込まれることなくやってきた戦後日本だが、結果としてよいことではあるが、今では戦争を知らない世代が政治を動かしている。

左派にせよ、右派にせよ、日本人の現実、世界の現実に基づかない理想論だけの政治は危うい。自民党の歴代総裁も、出自や思想は色々だが、おしなべてプラグマティックーーー現実的な政治を行ってきたし、それで良かったと思う。

ただ、これからの政治の舵取りは本当に難しい。世界の警察官であることを放棄し始めたアメリカ、一帯一路といったスローガンを元に飛躍的な発展を遂げ、経済的、領土的野心を隠さない中国、弱体化し崩壊の危機を迎えるEU。日本のみならず、先の大戦を経験していない各国のリーダーがどのような突飛な行動を起こすか予測が難しい。

戦争を起こさない、また巻き込まれないようにするのはとても大事なことだ。ただ、だからといって憲法で戦争放棄を謳ったり、自国の軍隊を放棄するのは、私は違うと思う。むしろ戦争に巻き込まれないために相手に攻撃を躊躇わせる、あるいは諦めさせるために必要な軍力を持つことが必要だと思う。

こちらさえ戦力を持たなければ、相手も攻撃してこない、という発想はどこからくるのか? 表向き、そうは言っているが、言ってる本人もその言葉を信じてはおらず、日本の軍事力を削ぐための周辺国のスパイではないかとさえ勘ぐってしまう。そのぐらい愚かな現実的ではない視点だ。

私は今回のNHKスペシャルを見て、彼が政権中枢に入り込んだ事実の是非はともかくとして、戦争の悲惨さを実際に知る者による現実的左派のプラグマティックな政治姿勢は今後も維持されなければならないのではないかと思った。それこそが結局は、日本の独立、独自性を保ちつつ、自国を戦争から一番遠い立場に置くことが出来る唯一の方策であるように思える。

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