編集・ライター養成講座・受講ログ「書籍編集者の仕事」


今回の講師は、小学館 出版局 編集長 菅原朝也氏。なんか肩書きだけで圧倒されるね。で、この人は世間的には『催眠』『下妻物語』『世界の中心で、愛をさけぶ』『いま、会いに行きます』『県庁の星』などを世に知らしめた編集者として知られている。菅原氏の人となりについては、下記リンクのインタビューを読んで頂けると大体分かると思う。
●出版ギョーカイ暴れん坊クン : 第4回 小学館出版局 菅原朝也氏

第一印象はとても熱情的。仕事で疲れている、と言いながらも、自身の出版、特に文芸に対する思いを熱く語ってくれた。

まずは、現在の出版業界の状況を正しく把握する、ターゲットを明確にする、という説明をしてもらった。
例えば、4マスと言われる、テレビ、新聞、ラジオ、出版物に加え、現在ではweb、ケータイ、ゲーム機などが、更に個人の余暇の時間を奪い合い、消費者が出版物に接する時間が減っている、というところから始まり、中高年、若年層、読書熟練者の好み、そして編集者は作って終わる従業員感覚ではなく、作って売る経営者感覚を持たないとやっていけない、等の話。

上記の話は、体系的に考えたことはなかったので、大変参考になったが、私が驚いたのは、まずひとつに、本を売るのに実に地道な作業をやっているということ。

例えば、ある長野出身の作家が長野を舞台にした作品を作って、これを売りたいとすると、長野の地方新聞、テレビ局、書店などに編集長自らが乗り込んで宣伝してまわる。長野で強い影響力をもつ系列書店に売り込んで、平積みコーナーを作ってもらう。そしてあるひとつの系列書店で、在庫が動き出すと、全国チェーンの書店がそれを察知して仕入れにかかる、てな具合で、ブームっていうのは、起こるものではなく、完全に努力で起こすものなんだな、ということ実際の話として知った。

もうひとつ驚いたのが、菅原氏自身が実は「セカチュー」「イマアイ」といったものはある程度薄っぺらいブームである、ということを重々承知していたこと。しかしながら、ありきたりな、まるで韓流ドラマの様な本でも、選んだのにはちゃんと理由があって、例えば、「セカチュー」で描かれている死生観はそんなに侮れるものではない、と言っていた。

そして、そういったブームや売り上げとは別に、これは!と思うものは、例え売れないと分かっていても、文化を受け継ぐものの責任として出版し、こつこつ売っていく、とも言っていた。

そう語る菅原氏の姿勢には、軽薄なブームの仕掛け人という印象は微塵もなく、とにもかくにもブームを起こして、一人でも多く活字に馴染んでもらおう、読書人口を増やそう、そしてその中から、本の素晴らしさに気付いてくれる人を一人でも増やそう、という、文芸に対する真摯な思いを感じた。

ところで菅原氏は、キンドルなどのモニターは長時間見るには目が疲れて向かない、流行らない、などと言っていたが、これはちょっと違う。キンドルは電子ペーパーなる表示方式を使っていて、これは完全な反射式のモニター。つまり光が当たらないと読めないのである。これは印刷物と全く同条件だと言ってもいい。私もキンドルを所有しているが、小説サイズの文量だと、バックライトが光る透過式の液晶であれば、途中で読むのが辛くなって投げ出すところであるが、キンドルで読む文章は文庫で読むのとほとんど体感的に違いはない。

それでももちろん、本であるアドバンテージはまだまだあって、ポイッと投げ出しても平気だし、もちろん電気は使わない。装丁やグラビアが綺麗で所有物として価値があったり、とか、いろいろある。

しかし、世の中の流れは速いから、例えば自由に曲がる液晶画面とかがあるし、これから反射式と同等ぐらいに目に優しい、そして電池の消費も非常に少ない、物体としても堅牢で安価なマルチ・ドキュメント・リーダーみたいのが出てくるかもしれない。そういった時代に、本である、紙であるアドバンテージというのは想像以上に少なくなってくると思う。

すこし話が脱線した。とにかく、ガワがどう進化しようと重要なのはその中身、コンテンツであることは違いがない。そして菅原氏の場合は、文芸が専門であるが、作家を探し、育て、フォローし、売れるパッケージを真剣に考えてくれる。こういった編集者がいるのは、とても頼もしい。文芸を愛し、理解し、そして売るノウハウも持っている。編集ってのは、実はかなり夢のある仕事なんじゃないか、仮に出版社が潰れたとしても、プロデューサーとしての能力があるのであれば、今から編集者を目指すのも決して間違ってはいないのではないか。そういう夢を見させてくれる編集者であった。

編集・ライター養成講座・受講ログ「書籍編集者の仕事」」への2件のフィードバック

  1. お邪魔します
    このブログ、復習になります笑
    ボーノさんのつぶらな瞳と
    文章からあふれ出る洞察力のギャップがおもろい!

    このおじさまは福山まさはるにそっくりでしたよね
    内容もさることながら
    口先でなく人格でトークしとるところに感心しました

  2. どうもどうも。

    福山雅治? 中尾彬じゃなくて? ・・・ああ、それ別の人やったわ。

    言っておくけどもギャップで笑いを取ろうとはしてないからね(笑)

    ちょっと更新頻度が落ちるかもしれないけど(それは週2回の飲み会と課題のせい!)、
    ちゃんと更新しますんで、また見にきてください。

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