4月8日にアップルは報道関係者向けの説明会でiPhone OS4.0を発表した。・・・とまあ、こればっかり話題になるのだが、iPhone OSのメジャーアップデートと同じぐらいにインパクトがあるのがiAdの発表だと思う。以下のリンクが簡単なiAdの説明。
「アップル、広告プラットフォーム「iAd」を発表。非Flashなインタラクティブ広告が広がるか? (ギズモード・ジャパン) | エキサイトニュース」
さらにアップルのCEO、スティーブ・ジョブズがiAdを説明する動画。
ジョブズは、携帯端末の中では、人々は検索はそれほど行わず、もっぱらアプリを利用しているという。そこでアップルは、グーグルがPC上のブラウザで頻繁に行われる検索に広告をヒモ付けして巨万の富を得た様に、iPhone内のアプリに広告をヒモ付けして、利益を得ようというのだ。
AdWordsとは、検索エンジンGoogleの検索結果に連動してWeb広告を掲載するサービスであり、グーグルの莫大な収入を支える屋台骨である。AdWordsは検索に連動する、というのが何よりも売りだったわけだが、最近になって、その検索の優位性が少しずつ薄れている。それはなぜか。
まず第一に、twitterの台頭が挙げられる。ネットユーザーの利用率はまだ8%台というtwitterだが、これから利用率はさらに伸びるだろう。そして、twitterをすでにやっている人はよく分かると思うが、気になるツイートにリンク先が記してあって、そのリンク経由で、ウェブサイトに行く、という行動パターンが増える。そうなると相対的に検索して目的のサイトに行く機会が減る。
第二にモバイル端末の進化だ。先のジョブズの発言にもあった通り、モバイル端末ではもっぱら、twitterを見る、ニュースリーダーを見る、ゲームをする、と、かなりそれぞれのアプリに頼った行動をしがちだ。iPhoneなどの小さい液晶画面の最適化されたウェブサイトはまだまだ少なく、その結果、モバイル端末上で検索したウェブサイトをそのままiPhone上で見るという機会も少なくなってくる。
そんなわけで、PC上でもモバイル端末上でも、検索の存在感が徐々に薄れつつある。そこへ来て、今回のアップルのiAdの発表。グーグルは、iPhone上の広告収入をごっそりアップルが持っていかれてしまうかもしれないのだ。それどころか、iAdは、モバイルにおける広告収入を現在の数倍にまで押し広げる可能性を秘めている。
しかも見逃せないのが、iAdは位置情報を扱えるということ。これはウェブ広告にとっては革命的なことで、iPhoneユーザーが例えば、渋谷で、食べログ的なアプリを使ってたら、iAdに渋谷の飲食店の広告を表示させることが出来るのである。twitterのクライアント・アプリでは、つぶやきの内容をチェックして、ユーザーが好みそうなジャンルのCMが表示されることが出来るかもしれない。
かくしてアップルはグーグルの土俵である連動型広告に飛び込んできた。今のところグーグルにとって救いなのは、アップル自身、広告についてはまだ素人なのと、アップルの垂直統合ビジネスモデルゆえ、androidなど他のOSには当面応用されないであろう、というところだ。
しかしながら、iAdはOSレベルでアプリ経由の広告をサポートするもので、しかもこれまでウェブの広告が苦手としてきたリッチな情報を(決してグーグルの三行広告ではないような)をユーザーに嫌がられることなく見せることが出来る。そして、先にも述べた通り位置情報とリンクすることが出来る。
よりリッチに。
よりターゲットを絞って。
ずっと課題と言われながらも、乗り越えられなかったウェブ広告の壁をiAdはやすやすと乗り越えるかもしれない。広告収入はグーグルにとって生命線である。現在でもグーグルの収益の97%は広告収入だ。さて、グーグルはどの様な対抗策を打ってくるだろうか。