私は宣伝会議の編集・ライター養成講座なるものに通っていて、卒業制作のテーマとして取り上げたのが「電子書籍」。私はこの卒業制作で優秀賞なるものを受賞した。
しかし・・・正直言うと、自分では出来栄えにそんなに満足していなかった。なにしろ、この数ヶ月、電子書籍の話題が尽きることがなく、それこそ専門家やジャーナリストの手による優れた論考分析を嫌というほど読んだからだ。
で、久々にこれはかなわん!と思ったのが下記の対談記事。
「談話室沢辺 ゲスト:ITジャーナリスト・津田大介 「Twitterで書籍を共有する時代へ」 | ポット出版」
先日、ツイッターでこの記事を紹介したら、沢辺さん自身の目に止まったらしく、下記リンクの様なコメントも頂いた。
http://twitter.com/sawabekin/status/15257858835
ま、それはともかく、上記記事や、また他にも優れた論考のブログ記事(※末尾記載)を読んだこともあり、あ、電子書籍ってこういうことかもしれない、というのが少しだけ実感として掴めてきたような気がする。
結論から言えば、電子書籍はマッシュアップされなければならない。上記対談にある通りだが、例えば、ニコニコ動画の様に、オリジナル曲を誰かがリミックスし、誰かが映像を付け、それに弾幕なるコメントが飛び交う。著名、無名の人達が、立場を越えて交じり合って、別のアートに昇華させていく。そこで大元のオリジナル曲が著作権でがんじがらめになっていたら、次の、リミックスする人、映像を付ける人が生まれてこないのである。
電子でやる良さは、オリジナルをコピーしやすいところにある。また改変も自由自在。著作権保護の観点から言えば、逆にそこが最大の欠点である訳だが、不正コピーで受ける損害の可能性ばかりに目をやるのではなく、簡単にコピー出来るメリットにより注目して、宣伝、販売の拡大の可能性を探っていくべきだろう。
「Inbook」なるサービスがある。気に入った本のフレーズを引用して、twitterに投稿するサイトだ。私はこれはとても面白い試みだと思って登録したのだが、他人の引用を読んではいるものの、自分で投稿したことはほとんどない。なぜなら非常に面倒だからだ。閉じそうになる本を片手に、一字一句、キーボードで文を入力する。そういう作業をしている時点で、読んだ時の感動が若干薄れてしまう気になるは私だけであろうか?
これがDRM(Digital Rights Management/デジタル著作権管理)フリーの電子書籍であれば、気に入ったフレーズがあれば、コピー&ペーストで、Inbookの様なサービスに簡単に投稿することが出来る。その投稿をみた別の人間が、気に入ってその本を購入するかもしれないし、その投稿が評価されれば、評価された人間は気を良くして、もっと色々な本を読んで投稿しよう、という気になる。つまり、ますます本の売上があがるし、活字を読む、本を読むという文化もより拡大してく訳である。
現在、書籍の売上において、書評ブログの影響力は決して無視出来るレベルではなく、それゆえ、有名な書評ブログを運営するブロガーには、出版社や著者からの献本が多数があるわけだが、これから電子書籍の販売の割合がより増えれば、Inbookの様に、多数の無名な人達の本からの引用、あるいは短い書評が書籍の売上をより大きく左右することになるだろう。
かように媒体が変われば、活用のされ方も当然変わる。電子の世界は小さな繋がりが、やがて大きなうねりを生み出す世界だ。しかもその伝播の速さは瞬間的で、かつ規模も大きい。本は、音楽の様に小分けにして売り出すことは難しいが、それでも、引用という形で、流通させることが出来る。そこで重要なのは、著作権保護の名の元にコピー&ペーストをさせないようにしたりして、その流通を阻害しないこと。そうでないと、電子の世界特有の流れに乗ることが出来ない。そこの判断さえ間違えなければ、電子書籍の時代というのは誰にとっても暗い時代足りえないと思うのだが。
参考ブログ:電子書籍の真実 – 女。MGの日記。