コロナがどうというより、写真に対する世間の価値観が変わって来たんじゃないかね。写真と言えばSNSにあげることを前提としたスナップという感じで、それもスマホの小さな画面でしか見ないのであれば、極端に解像している必要もないし。
よく見るとすごく綺麗だが、その結果を得るのにカメラ本体20万円、レンズがそれぞれ10万円するということに納得する人が少なくなっているのではないだろうか。
私は・・・以前ほど写真を撮らなくなってはいるが、それなりのカメラ好きだ。今では古い機種となってしまったが、ペンタックスのK-3というデジタル一眼レフを持っている。レンズも一時期は15本位持っていた。そんな私でもカメラの売り上げが大幅に下がるのは理解できる。
私は今、iPhone11 Proというスマホを持っている。iPhoneのフラッグシップモデルであり、カメラ性能が売りのひとつだ。レンズが3つもついていて、広角、標準、望遠を光学でもってカバーしている。スペックだけ見ると、もう一眼もいらんか?と思わせるほどだ。
また、高性能にものを言わせた画像処理も凄い。暗部の撮影ではナイトモードで手持ちでの長時間露光が可能だし、ポートレートモードでは一眼の大口径レンズで撮ったような見事なボケが発生する。どちらも凄い技術だが、特にナイトモードは、一眼でこれを再現しようとした場合、三脚にカメラをがっちり固定して、それでも画像がブレている場合があるので、ある意味一眼越えと言えなくもない。
そんなiPhone Pro11の写真だが、それでは本当に一眼レフカメラがいらんか?というと・・・残念ながら一眼のレベルには全く達していない、というのが私の正直な感想。
いや・・・いきなり逆のことを言って恐縮だが、スマホ、タブレットの画面、またブログでも横幅1600pxぐらいまでの画像だったら、iPhone Pro11の画像もかなりいい。撮影時の条件が良ければ、一眼で撮った写真と見分けがつかないだろう。
だが・・・iPhoneではそんな使い方は期待されていないのだろうが・・・Lightroomのような画像処理ソフトでピクセル等倍で画像を見てみるとさすがにiPhoneの画像は、ちょっと見るに堪えない。これは私自身も驚いた点なのだけれども。
iPhone Pro 11をピクセル等倍で見ると、塗り絵のようにべたーっと塗られてしまっている部分が目立つ。まるで油絵のようだ。それに諧調の豊かさもまるで違う。でもそれはそうなのだ。そうでなければおかしい。iPhone Pro 11のイメージセンサーの大きさはペンタックスK-3のそれと比較して6.6%ぐらいの大きさしかないのだ。そしてレンズの大きさもまるで違う。集められる光の面積、量がこれだけ違うのだから、それは画質が違わない方がおかしい。
だけども・・・でも、でも、と連続するのは悪い文章と言われているが(笑)・・・iPhone Pro 11の写真の場合、スマホの画面で見ると不思議とばっちり成立している。とりあえずピクセル等倍の見栄えは置いておいて、実用サイズの写真の出来を徹底的にブラッシュアップしよう、というAppleの姿勢が垣間見える。
写真に何を求めるかは人それぞれだが、現状、超広角から望遠まで光学で対応し、さらに画像処理で一眼っぽい写真が小さいサイズ限定ではあるがすぐ得られるiPhoneがあれば、多くの人はこれ以上を望まないのではないだろうか。
でも本当はそれだけではない。私も一眼レフで写真を撮る人間の端くれとして言わせてもらえば、例えばインスタグラムに上がってる写真でも一眼レフで撮った写真をわざわざインスタグラムに上げている写真は見て一発でそれと分かる。スマホのカメラでは絶対に出ないスムーズで豊かな諧調が、ダイナミックレンジの圧倒的な広さが一眼の写真には出ている。
だけども・・・この記事だけで何度「だか」とか「だけども」を連呼してるか分からないが・・・一般的なユーザーにはそこまでは必要ないんだなぁ。だって、必要とされるなら、一眼のエントリーモデルとかもっと売れてるはずだもん。
そんなことで、一眼レフユーザーからするとiPhone Pro 11の写真のレベルでは収まらない、もっと素晴らしい写真の奥深い世界があるよ、ということを主張したいと同時に、それでも、すぐにそれっぽい写真が取れて、その場でSNSにアップロード出来る。しかもスマホはいつも持ち歩くものだから、手元にカメラがないばっかりにシャッターチャンスを逃す、ということが基本的にはない。このスマホの圧倒的メリットを前に、むやみに一眼レフ、いいよ、と人に言えない歯がゆさもある。
それでも、一眼レフの「レフ」がなくなって、ミラーレスカメラになってもいいから、大きいイメージセンサーと大きいレンズで撮るカメラの素晴らしく、解像され、豊かな諧調の乗った写真の文化は廃れないでほしいなぁ、と思う。