久々にゲームの話題。
筋トレだの、DTMだのでなかなかゲームまで手が回らなかったのだが、私をアドベンチャーゲーム好きに変えてしまった原点のひとつである「ファミコン探偵倶楽部」のリメイク版だけはどうしてもプレイしなければならなかった。
オリジナルのファミコン探偵倶楽部には「消えた後継者」(1988)と「うしろに立つ少女」(1989)の2作品があるが、今回Switchで発表されたリメイク版はそれぞれダウンロード販売しか行われない。
しかし(私のような)ディープなファン向けに「ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女 COLLECTOR’S EDITION」というフィジカル版が発売されている。(※2021/7/19現在、すでに新品では買えない模様) もちろん私はこちらを購入。歳がばれるが、オリジナル版をリアルタイムで遊んだ人間はこの商品を手に入れる義務があると思う。(※令和最新版、個人の感想です。)
さて、早速ネタバレもりもりでそれぞれのゲームを今更レビューするぞー。
「消えた後継者」
リメイク版、一番の魅力は・・・
まず時の隔たりを感じさせるのが、グラフィックの進化とフルボイス化。そりゃそうでしょうと言われれば、返す言葉もないが、あのファミコン探偵倶楽部がこんな立派に・・・と娘の成長に目を細める父親の気分。なんだ、このブログ、気持ちわりぃな、とまだ立ち去らないでね(笑)
当ゲームのもっとも白眉な部分は、なんと言っても当ゲームのヒロインである、あゆみちゃんのビジュアルでしょう。ファミコンの時代のあゆみちゃんは、時代の要請もあったのだろうが、未来少年コナンのラナの様な顔をしていたが、その雰囲気を残しつつ、現在のギャルゲー(と言ってしまうとなんか悪い気がするが・・・)のヒロインとしても十分に魅力的なルックスに仕上げられていた。
一番の良さは、時代が下ってもなお色あせない秀逸なシナリオじゃないんかい、というツッコミがあろうかと思うが、このゲーム、ファミコン版の元祖ギャルゲーである、という側面は決して見逃がしてはいけない。
冒頭シーンで崖下で記憶を失っていた主人公に心配げに語り掛けてくるあゆみちゃん。この印象深い最初の出会いで、あゆみちゃんが男心をぐっとつかむようなキャラクターでないと、作品の魅力も半減すること間違いなし。
というわけで、まず最初におじさんたちの思い出補正も手伝って、再現のハードルが高かったであろう、あゆみちゃんがちゃんと魅力的に描かれていたことは評価のポイントとしてかなり大きい。
グラフィックで言えば、各キャラクターがかなり動くのも見逃せない。アドベンチャーゲームだから予算がないのか、予算がないからアドベンチャーゲームを作るのか、どっちが先かは知らないが、この2020年代においても、キャラも背景も1枚絵、というアドベンチャーゲームも少なくない中、今回のファミ探のキャラたちはよく動く。絵がどうしても止まりがちなアドベンチャーゲームにあって、よいスパイスとなっている。
UI (ユーザーインターフェース) について
このゲームは一度、ゲームのクオリティを上げるため、ということで一度発売延期になっているが、その発売延期前のUIと発売されたUIでは変化があった。(なぜ知っているかと言えば、発売延期前の開発中の画面が当時のニンテンドーダイレクトの紹介映像にあった) 発売後のUIはウインドウが半透明になり、選択肢の先の選択肢を選んでも変に横に伸びず、極力絵の邪魔をしない作りになっている。UIや操作系の評価は意外と難しく、良ければ最初からそれを受け入れ、それ以上なんとも思わないが、操作性が悪かったり、邪魔だったりすると途端に悪目立ちする。
今回のゲームのUIのことを語る人はあまりいないが、それだけゲームに集中させる良いUIということが言える。よってここも評価したいポイント。
肝心のシナリオは・・・
さて、ここでようやくシナリオの話。なんだかんだ言って、アドベンチャーゲームのシナリオの出来不出来はそのままゲームの出来不出来に直結する。(さっきと言ってることが違うが)
ファンだと言っていながら、何を隠そう真犯人が誰だったかすら、思い出せていなかったので、ほぼ新鮮な気持ちでシナリオを味わうことが出来た。
ただねぇ・・・プレイし終えて、本当の気持ちをいうと、殺人事件の謎解きという点からすれば、正直そこまで素晴らしい出来ではなかったように思った。綾城商事会長のキクをはじめ、キクの3人の子供、そ長男の完治の長男(キクにとっての孫)まで殺されたが、殺害の手口は意外と単純なものであったし、何しろ、そこまで殺しちゃ、自然と犯人、こいつしかいないな、ってなるだろ、と・・・。
と、連続殺人事件とその謎解きという面にスポットを当てれば、若干厳しい評価になってしまうが、このゲームはその他の要素がいい。・・・さてここから、盛大にネタバレますよ?・・・・
以下、盛大にネタバレ
気絶していた主人公を最初に介抱してくれた人が事件の真犯人でだったこと。非業の死を遂げた綾城家の血を引く女性が実は主人公の母親であり、主人公自身が綾城家の財産を引きつぐ唯一の人間であったこと。正当な後継者の印を土蔵奥で見つけたところを真犯人につけられていて、命を狙われるところ。そして最後、せっかく手に入れた金印を、法律家になっていた母と腹違いの弟(主人公にとっての叔父)に渡してしまうシーンなど、人間関係、サスペンスシーン、そしてさわやかなエンディング、とこの辺りは秀逸な出来だった。
またこのゲームはグロさも魅力の一つで、特にキクの死因がいよいよ怪しくなってきて、まだ土葬の習慣の残る村の寺の境内の墓地で、いよいよキクの墓を暴いたとき、墓の中にいたのが、真犯人の手足となって動いていた完治の長男のアキラだったのはかなり衝撃だった。埋葬用のでかい桶のなかに体育座りをさせられて、絶命しているアキラ・・・大人が見てもそこそこ衝撃なので、子供が見たらショックに違いない。
そんな訳で、謎解きに関してはまあまあだったが、その他ホラー要素、濃い人間関係、サスペンス要素など複合して評価すると、やはり名作アドベンチャーゲームだったと感じた。
リメイクに関してだが、前作のドット絵ならではの見えない怖さを今のリアルすぎるグラフィックでイメージを壊すことなくアップデートされてて、大変好感を抱いた。この調整は実際にはかなり大変だったのではないかと想像する。声優陣もかなり豪華で、演技もそれぞれ素晴らしい。これも触れだすときりがないので、この辺でやめておくが・・・あゆみちゃんの声が皆口さんだったのはやはり正解だったと言える。
なんか随分書いたなぁ。あと少し、欠点を少し挙げて終わりにしたいと思う。
不満点などを少し。
シナリオ。
先にも書いたが、連続殺人やその手口、犯行動機については割とありきたりなものだった。推理ミステリーとしてそこまで興奮させられるものではなかったのは残念といえば残念。まあその代わり、地道な調査で少しずつ状況証拠を集め、また動機についても確信を得ていくという犯人をじわじわあぶりだすスタイルで、そのねちっこさがエンディングのカタルシスに向かって段々緊張感を増してくる演出に一役買っていたのは間違いないが。
コマンド総当たりゆえの中だるみ。
そんなに詰まるゲームではないが、フラグが思わぬ選択肢にたてられており、その選択肢を選ぶまで同じシーンを延々とさまよう、というのが結構あった。まあこのコマンド総当たりがまさに当時のアドベンチャーゲームの基本構造であったので、どうしようもない部分ではあるのだが。
総括
長々と書いたなぁ。そろそろ結論を。リアルタイムでも後追いでもいいのだが、前作のファミコン探偵倶楽部をプレイしている人には間違いなくおススメ出来る、原作の雰囲気を全く壊していない良リメイク作品ですよ、と言いたい。
また、全く新規にプレイする人にもおすすめ出来る。グラフィック、キャラクターのモーション、背景絵の書き込み、どれも現代のアドベンチャーゲームのクオリティを全てクリアしている。シナリオを先に書いた通りだが、印象的なオープニング、危機一髪のサスペンス、さわやかで十分納得できるエンディングと、ストーリーがしっかりしている。この2020年代に昭和の山村を舞台にした設定のゲームをプレイするのも、それはそれで面白い。(ここまでネタバレしてそれでも新規にプレイする人がいるのかどうか知らないが(笑))
さて、「後ろの少女」についてはページを改めます。ではまた。
※本作はすでに売り切れ済みです。上記リンク先の商品は定価以上の新品か、中古品になります。