昨日のETV特集は大変興味深い内容でした。概要はこちら。
「【ETV特集】「暗黒のかなたの光明?文明学者 梅棹忠夫がみた未来」
なんだかんだで、3.11の震災以降、みんなそれぞれに社会のあり方とか自分のライフスタイルを改めて見直してみたり、未来のエネルギー政策に対して、答えを求められたりとかしてるわけです。
そんな中で、民俗学者の梅棹忠夫氏は、以前から文明が人類を滅ぼす、と予言していた訳ですね。これだけ書くと単なるニヒリズムの人に思えちゃいますが、氏はフィールドワークと称した現地の人と寝起きを共にする生活をしながら、世界中を調査し、やがて比較文明学者として名を馳せました。
そこで氏が実感したのが、人間は知的生命体である、ということ。そして、人間が知的生命体である以上、それこそ性欲と同じように、科学の追求、豊かさ、便利さへの追求の道を進むのは避けられないということでした。
しかしながら、そうした快適性の追求、そして科学技術が過度に進んだ結果、今回の原発事故の例を引き合いに出すまでもなく、逆にその科学や文明自体によって人類が滅びてしまう運命にあるのではないか、と危惧していたわけです。
私なんかは文明それ自身によって人類が滅ぼされる、とは夢にも思ってませんでしたが、地震津波で人間の無力さを痛感し、また原発事故で、嫌が上にもエネルギー政策、大げさに言えば、これからどう生きるべきか?を問い詰められた気がして、それでも、夏に向けての節電以外にこれといって変化する様子もない会社や社会に対して、いやいや、今こそ、人間の豊かさ、あるいは社会のあり方について根本から考える絶好の機会なんじゃないの?とちょっと不審に思っていた訳であります。
しかし、梅棹氏の意見に従えば、社会が必死になって以前の姿に戻ろうとする、場合によっては無かったことにしてしまおうとまでする、というのは、結局のところ、先にも書いたとおり、人間が知的生命体である以上、再び辿る繁栄と滅びへの一本道である訳です。
番組では、宗教学者の山折哲雄氏も出ていて、そこで、氏は、震災以降、二つの物語を思い出す、というわけです。ひとつは旧約聖書『創世記』の有名な「ノアの箱船」の物語。もうひとつは、法華七諭にある『三車火宅の譬え』この話の詳細は下記リンクをどうぞ。
「三車火宅の譬え」
乱暴に分ければ、西洋の限られた民だけ救済する、というストーリーを選ぶのか、東洋の全員救いますよ、というストーリーを選択するのか、というどちらかの選択を迫られているのではないか、ということです。
現代社会は競争、競争で、どちらかと言えば「ノアの箱船」的社会。しかし、これではやがて人類全体が行き詰まる。本当の答えはむしろ「三車火宅の譬え」の方にあるんじゃないか。資本主義、制度主義、物質主義の世の中にもっと情念、心の部分を取り入れていけば、あるいは、将来の破滅から免れる事が出来るのではないか、という提言でありました。
また、どなたの発言かは忘れてしまいましたが、企業、政府といった組織は、現状を維持しようとするものである。本当に世の中を変えていけるのは、市民である我々なのだ、ということを言っていました。梅棹氏の著述にも、アマチュア思想家宣言、というのがあって、思想は西洋の一部のプロだけのモノではなく、我々アマチュアも思想していい、むしろ答えはアマチュア思想家の中から出てくる。こんなことを書いてました。
ま、色んなとこで色んな人が色んなこといいますが、本当の意味で世の中を変えるのは政府や企業ではなく、私たち一人一人であるし、みんながもっと色々考え、それを発表していいんだ、と思います。素人なりにでも、色々見聞きして考えれば、有名な人の意見とか、世間一般の空気関係なく、自分にしっくりする考え、というのが何となく浮かび上がってきます。そんな訳で、私もアマチュア思想家として、しっかり思想していこうか、と思う訳です。