今、遅い夏休み中で、まあ色んなことしたんだけど、まず、これについて語っておきたい。
これから北野武監督の「アキレスと亀」を観に行く予定なのだが、前作の「監督・ばんざい!」を観てなかったので、まずここから観ることにした。
その内容と感想であるが・・・
まあ、正直言えば、駄作・・・かな? 特に今まで北野作品を全く観たことがない人が観るにはあまりにつらい内容だと思う。私は北野映画はあまり観たことがないし、監督としての北野武ファンでもないのだが、それでも「TAKESHIS’」には衝撃を受け、未だに日本映画では一番好きな映画である。それゆえ、密かに期待していたのであるが・・・。
前半の、バイオレンスが得意な監督がそれを封印し、色んなテイストの映画を撮ってみる、という体(てい)のオムニバス作品集はどれも面白いし、特に一番最後のやつなんかはそのまま映画化しても良さそうなぐらい面白かった。
が、それぞれにいちいちナレーションでケチを付けて、純愛だ、ホラーだ、昭和30年代だ、と色々あって、そんなものはオイラでも撮れるけど、いちいち底が浅いんじゃないの、と、ちくりとやる。
しかしながら、単なる高みの見物には終わらず、オイラも大した監督じゃないよ〜、とばかり、後半のぐだぐだコントになだれ込む訳だが、結局、そこが、この映画を現在の映画界を批判したいのか、それとも自己批判をしたいのか良く分からないものにしてしまっている感じがする。
「TAKESHIS’」はふんだんにお笑いを取り入れながらも、不可解な自分の内面を表現することにためらいがなく、観ていて気持ちが良かったが、今回のは、とうとう自分自身と自分の撮った映画も客観視してしまい、なんとなくしらけた、冷めた感じしか伝わってこなかった。まあ、北野監督の苦悩、ここに極まれり、といった感じなのだろうか。
ただ・・・単なる駄作と片づけてしまうには、もったいない作品。脳梗塞で倒れる前の江守徹のキレた演技、ラーメン屋のベタな展開、たけしと切っては切れない、階段でのコケ、目的の動作の前に、まず足を打つ、頭を打つ、などの一連のボケは、ビートたけしファンとしては、やはり思わず笑ってしまう。
それに、映像に、やはり映画を10本以上撮ってきた監督のキャリアを感じる。この人の絵作りは、いつまで経っても素人くささが抜けないが、それでいてプロフェッショナルな仕事だと感じさせる不思議な感じがいつもする。やはり、凡百の映画監督とは一線を画す絵作りの出来る監督だと思う。
そんな訳で、どこか一ヶ所を取れば、北野監督の凄さを実感出来る部分もあるのだが、全体通してみるとどうだろう? 僕にはこれというメッセージが伝わってこなかったし、何より映画にぶつける情熱みたいなものが感じられなかった。難解でも単純でも、コメディ性があってもなくても、どちらでも良いのだが、後半にいくにしたがって何となく繋げてみました的な展開に感じられるのが、思わず笑ってしまうのとは裏腹に、ちょっと辛かった。
さて、「アキレスと亀」。果たして北野監督が主題と映画作りへのモチベーションを取り戻しているかどうか・・・。僕が見たいのは北野監督の映画への情熱、かな。それが垣間見られれば、きっといい作品なんじゃないかと思うけど、さてどうでしょう。・・・あれ? 早く行かないと上映終わっちゃうか(笑)