梅棹忠夫が3.11後の世界に問いかけるもの。

昨日のETV特集は大変興味深い内容でした。概要はこちら。
「【ETV特集】「暗黒のかなたの光明?文明学者 梅棹忠夫がみた未来」

なんだかんだで、3.11の震災以降、みんなそれぞれに社会のあり方とか自分のライフスタイルを改めて見直してみたり、未来のエネルギー政策に対して、答えを求められたりとかしてるわけです。

そんな中で、民俗学者の梅棹忠夫氏は、以前から文明が人類を滅ぼす、と予言していた訳ですね。これだけ書くと単なるニヒリズムの人に思えちゃいますが、氏はフィールドワークと称した現地の人と寝起きを共にする生活をしながら、世界中を調査し、やがて比較文明学者として名を馳せました。

そこで氏が実感したのが、人間は知的生命体である、ということ。そして、人間が知的生命体である以上、それこそ性欲と同じように、科学の追求、豊かさ、便利さへの追求の道を進むのは避けられないということでした。

しかしながら、そうした快適性の追求、そして科学技術が過度に進んだ結果、今回の原発事故の例を引き合いに出すまでもなく、逆にその科学や文明自体によって人類が滅びてしまう運命にあるのではないか、と危惧していたわけです。

続きを読む

六ヶ所村ラプソディーを観て。

渋谷のアップリンクという映画館で『100000年後の安全』という映画を観たんだけど、それはそれは退屈な映画で・・・。フィンランドで高濃度放射線廃棄物を地下深くに埋める、その現場に潜入する、というドキュメンタリーなんだけど、ドキュメンタリーのくせして、背景の解説とかが凄く少ない。取材対象の人間が数人しかいない。後、オンカロとよばれる地下施設での映像が、ミュージックビデオかと思うほど、幻影的に撮っていて、いやいや、そういうことじゃないでしょ、と、ずーっとイライラしながら観ていた。映画を撮るなら映画、ドキュメンタリーを撮るならドキュメンタリー、はっきりさせてくれないと。ドキュメンタリーに作家性などいらん。

・・・期待して観ただけに思わずこき下ろしてしまったが、僕の印象では観るに値しないドキュメンタリーだった。もちろん映画としても。

で、アップリンクで観た予告編の中に「六ヶ所村ラプソディー」があった。そちらの方がよっぽど面白そうだったので、そっちを観に行こうと思ったのだが、どうにも時間が合わない。そんな訳で、DVDを買って観て見た。結論から言えば、素晴らしいドキュメンタリーだった。

続きを読む

芸術と時間。

マイミクさんが「携帯電話でもこれだけ高性能の動画撮影機能が付いていれば、そのうち静止画の必要性がなくなるんじゃないだろうか。」という主旨のmixiの日記に残していて、それについて、コメントを残しておいたのだが、そこで多少考えることがあったので、ここで再び論を展開してみようと思う。

結論を言えば、やはり、静止画(写真)と動画は全く別物である、と考えざるを得ない。でも、これは感覚的に多くの人が思ってることなんじゃないかと思うけど。

続きを読む

「アウトレイジ」ーリアル・エンタテインメントー 【映画評】

北野武監督の「アウトレイジ」を観てきた。

第一印象は、良く出来たエンタテインメント作品。これまでの多くの北野作品の様な行間を読むような作品ではない。ああ、観たなぁ。で、終わり。そういう意味では「座頭市」の系譜なのかもしれない。

しかししかし・・・それはあり得ないだろ!というシーンが多々あるのだが、それでも全体を振り返れば、ああ、実際にこうなんだろうな、と思わせる、かなりリアルな印象のエンタテインメント作品である。リアルとエンタテインメント。通常、両立しえないこの2つを観客に同時に印象づけるというところに監督、北野武の力量を感じた。

さて、自分で自分を俯瞰するようなメタ系の作品が続いた北野監督が、どうして今回、こういったエンタテイメント作品に真正面から挑んだのか・・・。それについて少しだけ触れてから、「アウトレイジ」について語りたい。

あ、思いっきりネタバレあり、なのでヨロシク。

続きを読む

電子書籍の衝撃、その後。

私は宣伝会議の編集・ライター養成講座なるものに通っていて、卒業制作のテーマとして取り上げたのが「電子書籍」。私はこの卒業制作で優秀賞なるものを受賞した。

しかし・・・正直言うと、自分では出来栄えにそんなに満足していなかった。なにしろ、この数ヶ月、電子書籍の話題が尽きることがなく、それこそ専門家やジャーナリストの手による優れた論考分析を嫌というほど読んだからだ。

で、久々にこれはかなわん!と思ったのが下記の対談記事。

続きを読む

日記を復活させよう。

mixiで2日に1度は日記を書いてる人がいて、実は、・・・などと大げさに書くことでもないが、私はその人の日記がかなり好きなのだ。それこそ、ブログではなく日記と呼ぶのにふさわしい内容。

その日記では、その日に起こったことと、それに関するちょっとした考察が書いてある。大事件について書いてある訳でもなく、またそれに対する考察も決して大それたものではなく、こう言っては失礼かもしれないが、ごく普通のものだ。

しかし、よく読むとただの日記ではないことが分かる。

続きを読む